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財布に残ったのは小銭だけだった現実
あの日、俺の財布の中には小銭がわずかに残っているだけだった。
1円玉、5円玉、10円玉、そして数枚の100円玉。
全部をかき集めても、たった276円。
これが俺の「全財産」だった。
借金生活を続けていると、こんな夜は珍しくない。
ギャンブルで負け、クレジットカードは止まり、消費者金融からもこれ以上借りられない。
まさに、どん底。
それでも、生きなきゃならないのが現実だった。
寒い冬の夜、手はかじかみ、吐く息は白い。
自販機の前で立ち尽くしながら、俺は考えた。
「この276円で、どう生き延びるか?」
それとも、
「今日くらい、自分を少し甘やかしてもいいのか?」
目の前にあったのは、120円のホット缶コーヒー。
暖かさを求めていた俺の手は、自然と小銭を投入していた。
ガコンという音とともに落ちてきた缶コーヒーを手に取った瞬間、
なんだか泣きそうになった。
温かい。たったそれだけで、心が少し救われた気がした。
借金生活の末路は「小さな幸せ」に気づくことだった

俺はベンチに腰を下ろし、缶コーヒーのプルタブを開けた。
ふわっと立ち上がる湯気と、ほろ苦い香り。
それをひと口飲んだ瞬間、思った。
「たった120円で、こんなに幸せになれるんだな」
昔の俺は違った。
パチンコで勝てば5万円、10万円と手に入った。
競馬で一発当てれば、財布はパンパンだった。
それでも、心は空っぽだった。
あの頃は、金を持っていても何一つ満たされなかった。
勝っても負けても、次のギャンブルを求めていた。
結局、借金は膨れ上がり、最後には何も残らなかった。
そして今、缶コーヒー一杯で幸せを感じている自分がいる。
落ちるところまで落ちたからこそ、
本当の意味で「満たされる」という感覚を取り戻せたのかもしれない。
「もう、これ以上失うものなんてない」
「だから、あとは上がるだけだ」
そんな風に思えた夜だった。
借金で辛い時期を乗り越えるために必要だったこと
財布に小銭しかない夜を何度も経験して、ようやく気づいたことがある。
それは、「完璧を目指さないこと」だった。
借金を抱えていると、すぐに「一発逆転」を狙いたくなる。
一攫千金、奇跡の逆転劇。
そんな甘い夢を追って、さらに泥沼にハマる。
でも現実は違う。
小さな一歩、小さな成功を積み重ねるしかない。
たとえば、今日の俺は
「276円の中から120円を使って、心を温める」という選択をした。
一見、無駄遣いにも見えるかもしれない。
でも、この缶コーヒーがなければ、俺は心が折れていたかもしれない。
明日を迎える気力さえ、失っていたかもしれない。
だから思う。
「今日をなんとか乗り切る」
これだけで十分だ、と。
借金を一気に返すことはできない。
完璧な生活なんて、今の俺には無理だ。
でも、小さな幸せを積み重ねて、少しずつ前に進むことならできる。
その積み重ねの先に、きっと未来がある。
全財産小銭だった夜から、人生は変わった

缶コーヒーを飲み終えた俺は、空を見上げた。
星がぼんやりと瞬いていた。
寒さが骨にしみたけど、不思議と心は少し温かかった。
財布にはまだ156円残っていた。
けど、不思議と不安はなかった。
「明日も生き延びよう」
そんな小さな決意だけを胸に、
俺はポケットに手を突っ込んで、ゆっくりと夜道を歩き出した。
【まとめ】
借金まみれの生活で、財布に小銭しかない夜もある。
でも、小さな幸せを見つけながら、今日を生き延びること。
それが、逆転への最初の一歩だった。

